前回述べたように、主語と述語からなる文は、論理学でいう命題ということになります。そして、主語が仮定で、述語が結論という役割になっているということでした。
ここでは、主語をP、述語をQというふうにしておきます。
「PはQである」という文は、「PならばQとなる」という論理の構造になるのです。略して「P→Q」と表記することにします。
それで、論理学=数学的には、こういう文=命題について真か偽かを判断することができるということでした。
そして、この真偽判断にさいしては集合の考え方を尺度にしているわけでした。
集合関係としては、P⊆Q、つまり集合Pが集合Qとイコールか完全に含まれているという関係にあるときに、命題P→Qは真となること、そのほか、つまりP⊃Qの場合には偽となるのです。
このような集合の包含関係は、私たち人類の経験や観測、推論や思考から組み立てられたものです。
したがって、言葉の定義の仕方によっては、ひっくり返ることもないわけではありません。
では、この考え方を使って以下の命題について、真偽を判断してみましょう。図形については、机の上のような平面の世界、つまりユークリッド空間でのこととします。
@ クジラは哺乳動物である。
A カブトムシは節足動物である。
B 昆虫はカブトムシである。
C 熱帯地方の方が、北極圏よりも昼間の時間は長い。
D 4辺の長さが等しい四角形は、正方形である。
E 正三角形は二等辺差角形である。
F 鉄は水に浮くことはない。
《正解》
@ 真。クジラは哺乳動物のなかの1つの種です。
A 真。カブトムシは昆虫で、節足動物のなかの1つの目(類)です。
B 偽。昆虫にはいろいろあって、カブトムシとは限りません。
C 偽。北極圏や高緯度地帯では、夏になると昼間が極端に長くなり、日没がなく夜がない白夜もあります。ただし「冬には」という季節の限定をすると、「真」になるのです。
D 偽。4辺の長さが等しい四角形はひし形で、そのうち4内角が等しい(直角)という特殊な集合が正方形となります。
E 真。二等辺三角形のうち、3辺(3内角)が等しい特殊な集合が正三角形。
F 偽。鉄でも船のような形にして体積を大きくして、重量よりも浮力が大きくなるようにすれば、水に浮きます。
では、次回までの課題を出しておきます。考えてみてください。
《課題》
@ 正方形は台形である。
A 平行四辺形は台形である。
B 平行四辺形はひし形である。
C 酸素は水よりも軽い。
D 対角線が直交する平行四辺形は、正方形である。
E 対角線が直交する長方形は、正方形である。
F 2つの内角が直角である台形は、長方形である。
G 台形のうち、向かい合う内角が等しく、対角線が直交するものは、長方形である。